【ネタバレあり】ミッドサマーについて

catatsuy
6 min readFeb 28, 2020

(注:ネタバレするので見てない人は今すぐ閉じましょう)

ミッドサマー、大変素晴らしい作品でした。かなりグロい描写もあるので、万人にはお勧めしませんが非常に楽しめました。

知識ゼロで見ても楽しめると思いますが、私は個人的に日本の歴史や民俗学について興味があり本を読むことがあります。そういった知識がある状態で見たので私は大部分の展開は予想することができました。それくらい民俗学についてしっかり調べた上で作られた作品だと感じました。

今回はミッドサマーで出てきた文化を元に世界の民族の文化や日本の文化を紹介してみます。

特に世界中の民族の風習などを集めて、世界中の民族に共通してみられる傾向を分析したフレイザーの金枝篇を読んでいるとかなり理解できます。金枝篇の記憶がかなり曖昧なので全体的に記述が曖昧ですが、勢いで書いているので気になる方は自分で読んで下さい。ちなみに金枝篇はめっちゃ長いです(自分が読んだのは中三のとき)。

私は専門家では全くないので詳細を知りたい場合は自分で調べて下さい。

この記事を読む前に

ミッドサマーに出てきた風習は実際にあり得そうな風習をしっかり作り込んだ作品だと感じました。狂気みたいな言葉を使う人もいますが、私はそういった解釈は他民族への文化を冒涜しかねない感覚だと感じます。

この記事は極力ニュートラルにかつてあった風習などについて記述していきます。女性差別的なものも含まれますが、あくまでもかつてあった風習であり、記事の執筆者の意見を反映しているものでは一切ないということを事前に書いておきます。

夏至と冬至

夏至と冬至は太陽が最も強まる・弱まる日なのでこの日に何らかの祝いをする民族は多いです。特に冬至の日はそこから太陽の力が復活する日になるので特別視されることが多かったようです。

現在の日本では冬至の時期はクリスマスの印象が強いかもしれませんが、実はクリスマスと冬至の日が近いのは偶然ではありません。元々太陽神を信仰するミトラ教をキリスト教が吸収するに当たり、ミトラ教の祭りが行われていた日にキリスト教内でも祝うことになったとされています。なので元々は太陽に対する信仰が元になっています。

著名なので知っている方も多いと思いますが、聖書の記述からイエス・キリストが寒い冬至の日に生まれたとは考えられません。クリスマスはイエス・キリストが生まれた日ではありませんし、キリスト教内でも生まれた日だとは考えられていません。

祭りと来訪者

祭りというのはどの民族にとっても重要なイベントです。そんな重要なイベントに外部からの来訪者が訪れるというのは何を意味するのでしょうか。

日本では「まれびと信仰」と呼ばれていますが、突然の来訪者を神と見立てて丁重に扱う風習は日本だけでなく世界的に見られる傾向です。また昔の農村などはコミュニティが狭く、近親婚が起こりやすい環境だったため、来訪者とのこどもを作りコミュニティ内で育てるということも日本を含めて一般的に行われていました。

またコミュニティ内の女性の処女喪失に関して何らかのルールが存在すること自体も珍しい話ではありません。一昔前の日本の農村などにもルールが存在していた話はあります。

他にも様々な事例があるので紹介していきます。

祭りに来訪者の首などを捧げる風習なども世界的に見られました。日本で有名な事例だと台湾の原住民族による首狩りの風習でしょう。日本統治時代に日本人も首狩りの犠牲にあったとされています。

また来訪者を王として一定期間祭り上げる風習を持った民族の事例も金枝篇で紹介されています。来訪者になんらかの神聖な力を感じる民族は世界中に存在しているからこその事例です。

以上のように来訪者を特別視する風習自体一般的に見られる風習であり、来訪者の存在が必要だったイベントを持っている民族も存在しました。ミッドサマーにおける来訪者の扱いは民俗学の視点から言えば教科書通りのイメージです。

髪の毛などの毛や血液

髪の毛など元々体の一部だったものに何らかの霊的なものを感じることも世界的に見られます。日本で現在でも見られる事例として、呪いたい人の髪の毛を入れたわら人形に五寸釘を打ち込んで呪いをかけるというものが著名です。

ちなみに血液も同様ですが、日本だと血は穢れとされていました。そのため血を利用した風習は海外に比べると少ない印象が私にはあります。キリスト教では赤ワインをキリストの血と見立ててミサなどに使用されていますが、血液を穢れと考えていた日本人には理解しにくい考えかもしれません。

余談ですが、日本では血が出る行為はすべて穢れとされていたため出産・生理などは代表的な穢れの行為でした。そのため妊婦や生理の期間を専用の産小屋に女性を閉じ込めて穢れが広がらないようにしていました。産小屋は穢れていると考えられていたので一定期間使用したら燃やしてしまうことが多く、現在では国内にほとんど残っていません。産小屋の風習は日本神話に当たり前に出てくるのと、出産時に燃やした話も残っているのでかなり古代からあった風習と考えられています。

宗教と麻薬

幻覚作用を起こす麻薬などは宗教においてかかせませんでした。数多くの宗教で使われてきた話が残っていますし、日本でも神社と大麻は現在でも切れない関係性を持っています。

最後に

ミッドサマーはキリスト教的な価値観しか知らない人からするとかなり抵抗が強い作品かもしれません。しかし紹介した通り、昔の日本にも存在していた風習が数多く出てくるので日本人には抵抗が少ないかもしれません。

ヨーロッパはギリシャ神話などで分かるように、元々多神教的な文化圏でした。それがキリスト教の普及により現在ではその文化はほぼ死滅してしまいました。ミッドサマーのホルガ村は古いヨーロッパの文化がモデルになっていますが、古いヨーロッパの文化自体が現在のヨーロッパではかなり物珍しいため、不気味に映るのだと思います。

他にも色々ある気がするので思い出したら追記するかもしれません。

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