ソフトウェアエンジニアが執行役員CTOになった理由

2021/4に株式会社PR TIMESの執行役員CTOに就任しました。

今までソフトウェアエンジニアとして働いてきて、マネージャー経験もない人間が突然「執行役員CTO」という役職についたので、色んな人に驚かれ、今でも色んな人に理由を聞かれます。そういえば個人のブログなどで何も発信してこなかったので、理由を公開しておきます。

実は社内向けにCTO通信というのを書いているのですが、そちらの内容の抜粋です。社内ではもう少し赤裸々なエントリーになっているので、読みたい方は入社してください。

それとこちらのエントリーは主に私とこれまで一緒に働いてきた人向けのエントリーなので、私のことをよく知らない人はこの場で読むのを止めてください。これまでの私のキャリアについて興味のある方は職務経歴書を公開しているのでそちらを参照してください。

メルカリを辞めた理由

メルカリは働きやすく、いい会社で特に辞める予定はありませんでした。

CTOという役職自体には以前から興味がありました(その理由は後述)。しかし誰がCTOをやっても意味のない会社というのは存在するので、そういう会社に入社して自分のキャリアに傷をつけたくないなとも思っていました。なので今回の話をもらったときも最初はOKを出さずに、業務委託として社内を見させてもらうことにしました。

知り合いの会社で業務委託として働いた経験は何度かありますが、他社の中を見れると本業でもその経験を活かせたり、自分の考えを一般化させることができたりと、色々メリットがあります。なので業務委託を始めた理由はCTOをやりたいからではなく、PR TIMESの人達がどう働いているかを経験として見てみたかったという理由でした。

業務委託の中で開発本部だけではなく、色々な人と交流を持たせてもらい、この会社に足りていないことは私のこれまでの経験を使えば補えるのではないか、私にとっての次のチャレンジにこれ以上最適な会社はないのではないかとも思いました。

またメルカリのValueであるGo Boldが背中を押しました。特に2020年末にsuguruさんがメルカリCTOを辞めて、子会社のソウゾウのCTOになったことが私の中では非常に大きかったです。

メルカリのCTOという立場にあってもチャレンジし続ける姿勢を見て、私自身ももっとチャレンジしなければならないのではないか、と考えるようになりました。正直大好きなメルカリを辞めてまでCTOを引き受けるべきか悩みました。しかし今回の話を断ればメルカリの人間としてGo Boldではないのではないか、メルカリの人間だからこそ会社を辞めてGo Boldな挑戦をすべきなのではないか、と考えて今回の話を受けることにしました。

役職持ちに興味があった理由

大学生の時はエンジニアとして技術を極めたいという気持ちが強く、役職持ちになりたいという気持ちは全くありませんでした。

しかしこれまでソフトウェアエンジニアとして会社員として働いていく中で、技術だけで解決できない様々な問題にも直面してきました。そういった問題に直面したとき、私にできることは色々したつもりでしたが、平社員の立場ではできることは非常に限られており、根本的な対応をするには相応の立場が必要でした。

それまで役職持ちになることに興味が全くなかったのですが、そういった経験をしていく中で、本当は私は役職持ちにならないといけない人間だったのではないかと感じることもありました。

CTOという役職に興味があった理由

また技術的な部分でもトップでないとサービスをよくできないと感じることがありました。私はpixivというサービスのHTTPS化を行いましたが、当時各サービスが一気にHTTPSになった時期でした。Chromeが期限を示していたのでやらなければならない時期は決まっていました。各社がその時期に合わせて一気にHTTPS化したため、そのタイミングでHTTPSでないサービスはほぼなくなりました。

大規模なHTTPS化をしっかりやった会社に話を聞く機会がありましたが、どの会社もトップダウンでHTTPS化に投資することを決定していました。サービスを本当によくするためには経営陣が適切な投資判断を行う必要性があるということを強く認識した事例でした。

私はメルカリでも似たような事例として、古いTLS 1.0/1.1のサポートを停止するという対応も行いましたが、HTTPS化の経験からトップダウンの重要性を知っていたので、まずは古いTLSを落とす意思決定をトップの人にしてもらい、その後に社内手続きを進めるという方針で進めました。それにより意思決定してもらった後はスムーズに実行まで移せました。

古いTLSのサポートを落とす件はうまくいきましたが、サービスを技術面で良くしていくためにはトップダウンでの意思決定が非常に重要であり、本当に良いサービスを作りたいなら自分自身が技術的な知見から意思決定できる立場にならなければいけないという気持ちを強くしました。

ここで気をつけないといけないのは肩書きです。CTOという肩書きしか持っておらず、名ばかりCTOで実際の権限は全く持っていないという人も業界内には実はいます。

例えば「執行役員CTO」や「取締役CTO」という肩書きであればある程度経営に関わることができます。経営に関われるのであれば、HTTPS化のような一見投資する価値がないように見える技術投資も経営として必要であると経営会議などで主張できます。私の今の肩書きは「執行役員CTO」で経営会議にも参加しています。まだ不慣れで経営会議の中で有意義な発言をできていないのですが、これからエンジニア出身である私が参加している意義を発揮していこうと考えています。

最後に

以上の前提があったので、私はオファーの受諾前に「執行役員CTO」という肩書きになることを確認してからオファーを受託しました。名誉職のCTOならば断るつもりで聞いたのですが、経営にも関わって欲しいと代表の山口さんに言ってもらえたので、これは私の人生をかける価値があるかもしれないと考えて、挑戦を決めました。

まだ就任してから2ヶ月あまりですが、今後目指していく目標を定めたり、宣言通りに社内ISUCONを開催したり、セキュリティ向上のためにKENROを導入したり、社内IT改善のためにコーポレートチームを設立したりと、様々な改善のために一つ一つできるところから手を付け始めています。まだ準備中のものがいくつもあるので、公開できる状態になったら公開していくつもりです。

まだ始まったばかりですが、少しずつ前進していると思っています。しかし進めたくても仲間がいなければ進められないという現実にも直面しています。もし弊社の状況に少しでも興味がある方がいればtwitterのDMも開放しているので連絡をもらえたらうれしいです。

将来の夢は隠居です